「アメとムチ」という言葉があります。
アメ=褒める、褒美を与える、に対して、ムチ=叱る、罰する、という意味です。
親は、そのつもりがなくても、子どもの行動の善し悪しによって、このアメとムチを使いながら、子どもの行動を自分の思い通りにコントロールしようとしてしまいます。
つまり、接し方に条件をつけているのです。
子どもが大人の思い通りに行動した時にだけ愛情を与え、期待に沿わなかった時には愛情を引っ込めるといったことです。
行動だけを見て判断しているのです。
逆に、無条件に接する場合、行動の善し悪しに関わらず愛情を注ぎ、子どもの気持ちに寄り添う子育てもあります。
子どもをコントロールするのではなく、気持ちを考え、考え方や行動の理由に向き合います。
このことについては、「そんなことは絶対にない!常に子どもに愛情を注いでいるし、そのために叱ったり褒めたりしている」と思われる方も多いでしょう。
その通りです。
しかし、幼い子どもは親の愛情の変化にとても敏感です。
そのため、愛情をエサにする接し方を繰り返すと、褒められた時に愛されていると感じ、逆にそうでない時には愛されていないと感じてしまうのです。
重要なのは、大人が「私は愛している」と自分を納得させることではなく、愛情の受け取り側である子どもが実際どう感じているかということなのです。
子どもは親からの愛情を常に欲しているため、愛されるために褒められる行動をしたり、愛されるために親の機嫌を伺うような行動をしようとします。
具体例
例えば、毎晩長女に絵本を読む約束をしていたとします。
しかし長女が「着替えたくない!」と寝る前にぐずったとします。
小さな弟たちもいるのにどうしても言うことを聞かない長女に、とてもイライラします。
そして思い通りに動かなかった長女には絵本を一緒に読む権利はないと判断し、罰として絵本の時間をやめることにします。
お父さんやお母さんと一緒に過ごす時間を取り上げられることは、子どもの目には、愛情を引っ込められたように映ります。
このように愛情をエサに条件付きの接し方を繰り返すと、子どもは「親の思う通りに動かなかったら愛してもらえない」と思うようになります。
では、無条件に接した場合はどうでしょう。
長女がぐずった後もいつも通りに一緒に絵本を読みます。
絵本の時間の前後に、先ほどの出来事を話し合ったり、親の気持ちを伝えたりできます。
親の気持ちの伝え方
例えば、出かける前になかなか支度をしてくれない子どもに対して、
「あなたが朝にダラダラしていたから、遅刻しちゃうじゃないの」
と、相手中心のコミュニケーションをとると、受け手側は責められたと感じやすく、攻撃的になったり、言い訳をしたりと、自己防衛の反応をとりやすくなります。
一方、親自身が自分の気持ちを正直に伝えると、子どもが相手の感情を思いやるきっかけになります。
「朝、時間通りにお家を出られたら、私は安心するんだけどな。遅刻すると教室の邪魔になるから、次からは時間通りにお家を出られるように一緒に頑張ってみようか」
というような伝え方です。
他にもいくつか例を挙げます。
・子どもの行動を客観的に描写
×「どうして弟を叩くの!」
〇「おもちゃの取り合いになって、弟のことを蹴ったのね」
・正直に親や関わった人の気持ちを伝える
×「やめなさい!」
〇「蹴ったりして暴力をふるうのを見ると、ママはとても悲しい気持ちになるよ」
〇「蹴られたときに、弟が泣いて落ち込んでいたよ」
・なぜその行動に問題があるのかを、親や関わった人に与える影響を例に説明
〇「喧嘩をして壁に穴が開いたから、困ったな」
「蹴られて、弟は落ち込んでずっと泣いてたよ」
・どうしたら回避できるかについて解決策の話し合い
×「今度また弟を叩いたら、罰金ね」
〇「暴力を使わずにおもちゃを2人で使う方法をみんなで一緒に考えよう!」
褒める時にも気持ちを伝える
つい子どものダメなところに目がいきがちですが、ネガティブな気持ちだけでなく、ポジティブな気持ちも共有してください。
「お皿を下げてくれて助かるわ。嬉しかったよ」というように。
自分の気持ちを伝えているように見せかけて、相手を批判するようなことを言わないようにしましょう。
例えば、「いつもあなたが宿題をやらないでダラダラしているせいで、ママはイライラしちゃうわ」
は一見、自分の気持ちを伝えているように見えますが、実は子どもの行動批判になっています。
子育てで、ストレスを感じ、日々一番悩ましいと考えているのは、子どもが思うように行動しないことだと思います。
子どもの行動を変えるには、まずは自身の言葉から変えてみてください。